人工透析で障害年金が“もらえない”3つの理由|不支給を防ぐ対策を社労士が解説
「人工透析をしていれば、障害年金はもらえると聞いていたのに…」
「申請したけれど、不支給の通知が届いてしまった。なぜなんだろう?」
人工透析を受けている方やそのご家族から、このようなご相談をいただくことは少なくありません。確かに、
人工透析を受けている方は、障害年金の対象になります 。
しかし、実際には「もらえない」という厳しい結果になってしまうケースが存在するのも事実です。
この記事では、障害年金申請の専門家である社会保険労務士が、人工透析で障害年金が「もらえない」代表的な3つの理由と、それを乗り越えて適切に受給するための具体的な対策を徹底的に解説します。
もしあなたが、
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これから申請するにあたり、失敗したくないとお考えの方
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一度申請して不支給になり、理由がわからずお困りの方
であれば、この記事がきっと解決の糸口になるはずです。
Contents
【結論】人工透析でも障害年金がもらえない3つの大きな理由
まず結論からお伝えします。「人工透析=障害年金が必ずもらえる」というわけではありません。障害年金には、障害の状態以前にクリアすべき大前提となる要件があり、そこでつまずいてしまう方が非常に多いのです。
不支給となる主な原因は、以下の3つに集約されます。
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初診日の要件を満たせない(初診日の壁)
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保険料の納付要件を満たせない(保険料納付の壁)
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申請書類の内容が不十分(申請書類の壁)
一つずつ、具体的なケースと対策を詳しく見ていきましょう。
理由①:『初診日の壁』でつまずくケース
障害年金制度において、「初診日」はすべての土台となる最も重要な日です。初診日とは、
人工透析の原因となった腎臓の疾患で最初に医療機関を受診した日を指します 。
この初診日を証明できないと、審査の土俵にすら上がることができず、不支給となってしまいます 。
▼こんなケースは要注意
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昔のことなので、最初の病院がどこか覚えていない
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病院が廃院しており、カルテが残っていない
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健康診断で異常を指摘されたが、病院には行かなかった
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初診日に国民年金や厚生年金に加入していなかった
特に、腎臓の疾患は自覚症状がないまま進行することが多く、最初の受診から透析開始まで長い年月が経過することも珍しくありません。その間にカルテが破棄(法定保存期間は5年)されると、証明は極めて困難になります。
【対策】初診日の証明を諦めないでください
カルテがなくても、諦める必要はありません。「初診日を証明する書類」は、当時の診察券、お薬手帳、生命保険の給付金請求の記録など、様々なものが認められる可能性があります。
どうしても証明が難しい場合でも、専門家が介入し、当時の状況を丁寧にヒアリングすることで、証明の糸口が見つかるケースは多々あります。初診日の特定でお困りの方は 、絶対に一人で抱え込まずにご相談ください。
理由②:『保険料納付要件の壁』でつまずくケース
障害年金は、国の保険制度です。そのため、初診日の前日までに、一定期間以上、年金保険料をきちんと納めている必要があります。これを「保険料納付要件」と呼びます。
▼こんなケースは要注意
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若い頃に年金を払っていなかった時期がある
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自営業で、つい保険料を払い忘れていた期間がある
自分では払っているつもりでも、未納期間があって要件を満たせていない、というケースは後を絶ちません。この要件は法律で厳格に定められているため、あとから保険料を追納しても認めてもらうことはできず、不支給の大きな原因となります。
【対策】まずはご自身の年金記録を確認しましょう
「ねんきんネット」や年金事務所で、ご自身の保険料納付記録を正確に確認することが第一歩です。もし未納期間があっても、免除申請をしていた期間は納付したものとして扱われる場合があります。記憶が曖昧な方は、必ず専門家と一緒に確認することをお勧めします。
理由③:『申請書類の壁』でつまずくケース
上記2つの要件をクリアしても、最後の壁として立ちはだかるのが申請書類です。特に重要なのが、医師に作成してもらう「診断書」です。
人工透析の場合、診断書に「人工透析施行中」と記載があれば、障害の状態自体は認められやすいです。しかし、診断書の内容が不十分であったり 、ご自身で作成する「病歴・就労状況等申立書」の内容に矛盾があったりすると、審査で不利に働くことがあります。
▼こんなケースは要注意
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医師に日常生活のつらさを十分に伝えきれていない
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診断書を依頼しただけで、内容を確認せず提出してしまった
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申立書に「仕事はなんとかできています」など、頑張っている様子を書いてしまった
医師は治療の専門家ですが、障害年金制度の専門家ではありません 。また、診察室での短い時間だけでは、あなたの日常生活の本当の困難さ(透析後の倦怠感、食事制限、就労の制約など)は伝わりきらないのです。
【対策】「日常生活の困難さ」を具体的に伝える
医師に診断書を依頼する際は、日常生活でどのようなことに、どれくらい困っているのかを具体的に書いたメモを渡しましょう。
(メモの記載例)
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透析の翌日は強い倦怠感で一日中横になっていることが多い。
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シャントがある腕では重いもの(買い物袋など)を持てない。
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食事制限のため、家族と別のメニューを自分で用意する必要があり負担が大きい。
こうした客観的な事実を伝えることで、あなたの実態に即した診断書が完成し、正当な認定につながります。
もし不支給(もらえない)決定を受けてしまったら
万が一、不支給の通知が届いても、そこで終わりではありません。決定に不服がある場合、「審査請求」という不服申し立ての手続きができます。これは、決定の取り消しを求めて、もう一度審査をやり直してもらう制度です。
最初の申請で不支給だった方が、審査請求で専門家である社労士のサポートを受け、決定が覆って2級に認定された事例は数多くあります。
「もらえない」と諦める前に、なぜ不支給になったのか原因を分析し、正しい対策を講じることが何よりも重要です。
【基本に立ち返る】本来、人工透析は障害等級2級に認定されます
ここまで「もらえない」ケースを解説してきましたが、
人工透析を週3回以上受けている場合は、原則として障害年金の「2級」に認定されます 。これは腎疾患の障害等級の中で明確に定められている基準です 。
また、障害年金の認定対象となる日(障害認定日)は、
原則として透析を開始してから3ヶ月が経過した日となります 。
受給できる年金額の目安
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障害基礎年金2級(国民年金のみ加入の場合):年額831,700円(令和7年4月時点)。お子様がいる場合は子の加算があります 。
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障害厚生年金2級(厚生年金に加入していた場合):上記基礎年金に加えて、報酬比例の年金が上乗せされます。配偶者がいる場合は配偶者の加給年金(239,300円)が支給されることもあります 。
障害年金の専門家(社労士)に相談するべき理由
障害年金の申請は書類が複雑で、専門的な知識が求められます 。私たち社会保険労務士にご依頼いただければ、
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複雑な初診日の証明を、あらゆる可能性からサポートします。
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保険料納付要件を正確に確認し、申請可能か的確に判断します。
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あなたの日常生活の困難さを正確に反映した、質の高い申立書を作成します。
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診断書作成のポイントをまとめた依頼状で、医師との連携を円滑にします。
これらのサポートにより、手続きを正確に進め、受給の可能性を高めることができます 。
まとめ:その不安、私たちにご相談ください
人工透析治療は、身体的にも精神的にも、そして経済的にも大きな負担を伴います。障害年金は、その負担を軽減し、あなたが安心して治療に専念するために国が用意した大切なセーフティーネットです。
「私の場合は、もらえない理由に当てはまるかもしれない…」
「初診日があいまいで困っている」
そのような不安を抱えたまま、一人で悩まないでください。当事務所では、障害年金に関する
無料相談を実施しております。あなたの状況に合わせた適切なアドバイスをいたしますので、ぜひお気軽にご相談ください 。
当事務所における受給事例
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